良い考えの浮かびやすい状況について、「三上」という言葉があります。
三上とは、馬上、枕上、厠上。
馬の上、布団の上、厠で用をたしている時。
これは、中国、北宋の政治家でもあり文学者でもある欧陽修が遺した言葉。
現代に置き換えれば、馬上は、車やバイク、電車での移動時間ということになるでしょう。
枕上とは、朝、目を覚まして起き上がるまでの時間。
厠上とは、お手洗いの中で一人になり、緊張感から解放された状態。
なぜ、この馬上、枕上、厠上で良い考えが浮かびやすいのでしょう。
人は考え事をする時には、一つのことに集中してしまいがち。
集中時には、車に例えるとアクセルの役割を果たす交感神経の働きが高まります。
この仕組みにより、今考えていることに関係しない感覚が鈍ることになります。
すると、目の前のことだけに意識が向かい、細かいことに気が付かなくなります。
思考の幅が狭まるため、かえって何も良い考えが浮かばなくなってしまうでしょう。
馬上、枕上、厠上の三上は、このような状態から解放される絶好の機会。
車の運転中は、嫌でも周囲の状況に意識が向かいます。
集中して考え事をしている場合ではないでしょう。
枕上、つまり布団の上で寝ている時。
横になると人は、ブレーキの役割を果たす副交感神経の働きが優位になり、自然と集中は解かれます。
お手洗いの中は、ある意味、最も気持ちがくつろぐ場所。
どんなに忙しい時でも、トイレに入った瞬間にホッとした気持ちになる。
そんな感覚には、誰でも覚えがあるのでは?
このように、考え事からフッと離れて緊張が解けた瞬間に、それまで鈍っていた感覚が急に蘇って来ます。
本来の感覚が戻った途端、思考も様々な方向へとつながり、良い考えが浮かびやすくなるというわけです。
「発明するためには、他のことを考えなければならない」
これは、スリオという心理学者の言葉。
力んでいては、良いアイデアが浮かびやすい状況はつくれません。
とはいえ、全く緊張が緩んでしまうのも良くありません。
ある程度は緊張が保たれ、他のことをしようにも出来ない状態。
何かをやっていても、ひたすら集中しているわけでは無く、心は解放された状態。
こんな時が、思考を整理し、良いアイデアや閃きを得るために最も適した状態。
移動中、布団の上、お手洗いの中。
この三上で、フッと閃いた考えを、そのままにせずに活かそうと意識してみてはいかがでしょう。
きっと、良い習慣になると思われます。