私は先月の山籠もりから下りて来て毎日、般若心経を唱えています。
信仰心が厚いのかと聞かれれば。
正直、宗教的な話はほとんど知らず、かなり苦手な分野です。
真言宗は高野山が総本山で空海が開いた、天台宗は比叡山延暦寺が総本山で最澄が伝えたなど、歴史の授業で習った程度のことしか知りません。
お経を唱えるようになったのは、ただ心地良いから。
般若心経を唱えるだけで、いつも気持ちがリセットされるためです。
お経のリズムは実によく出来ていて、自分の声を聞いていると、不思議なくらい心身ともに落ち着いた状態になれるのです。
いつもリラックスした状態で、ストレスも少なく、心地良く過ごせるようになりました。
なぜなのでしょう?
信仰心とは無縁だった私のような人間が、般若心経を唱えるようになったのは。
20代の頃、鍼灸師、柔道整復師としての私は、医学的な理論と根拠の無い話は、頭が受け付けない方でした。
現代医学的な考え方にのみ基いて治療方針を立てることしか出来ませんでした。
専門分野は怪我の治療や、人の痛みを和らげること。
整骨院を開業してからも日々、痛みを訴えて来られる患者さんと接していると、ある事が気になり始めます。
なぜ、人の痛みや精神状態は、これほど天候に左右されるのだろう?
そこで、天候の変化が与える自律神経の働きへの影響を意識し、それが痛みや精神状態を変化させていることを知りました。
人の自律神経の働きについて勉強を始めると、免疫系と強い関わりがあることがわかります。
次は、免疫の勉強。
免疫系の働きは初歩的な話だけでもかなり複雑ですが、大雑把にいえば白血球が担当している機能です。
ある種類の白血球は、他の免疫細胞の活動を強めるため、サイトカインという物質を作り放出します。
免疫細胞には自分で作り出したサイトカインが自らにも作用し、自身の働きも活性化させる現象があり、これはオートクライン効果と呼ばれています。
そして、この言葉を全く別のところで耳にする機会が訪れました。
コミュニケーション力についての講演会に参加して聞いた話です。
「人は耳から聞いたことを言葉に出し、人とシェアすることで理解力が7倍深まる、これをオートクライン効果という」
普段使っている言葉が、自分自身に強い影響を与えているという話は、誰でも一度は聞いたことがあるでしょう。
私はこの話を聞いた時、発した言葉が自分自身に影響を与える理由が、免疫系の仕組みとリンクし、一気にイメージが膨らんだのを覚えています。
それから数年後の今年。
一週間毎日、般若心経を唱える機会をいただき感じたのが、お経を唱えると心身ともに何とも言えない心地良いリラックス状態になれること。
般若心経は簡単に表現すれば、このような意味です。
この世には、苦しみなど無い。
老いや死も無ければ、老いや死が無くなるということも無い。
行こう、行こう、苦しみの全くないところへ。
みんな幸せになろう。
さあ、行こう。
私も般若心経を覚えてはいましたが、その意味についてはほとんど知りませんでした。
ですが、意味など知らなくても言葉を口に出し自分の耳で聞くことで、本当に悩みや苦しみが消えてしまうのです。
正に、自分が発した言葉が自分自身に大きな影響を与えている。
般若心経のように昔から伝えられている言葉には、やはり大きな力があると知ることが出来ました。
心と体の健康を扱う治療家として、このお話はまた、じっくりとお伝えさせていただきたいと思います。
高度情報化社会の今、便利さと引き換えに、人が感じる精神的なストレスや不安も、昔の数倍になっているといわれています。
そのストレスや不安が頭を慢性的に疲労させ、多くの人が本来の能力を発揮出来ないまま日々を過ごしています。
こんな時代だからこそ、昔から伝わっている言葉に触れてみることが大切。
般若心経でなくてもかまいません。
お経でなくてもいいでしょう。
古くから伝わる詩や歌などでも良いかも知れません。
リズム良く口にすることが出来て、心も体も深いリラックス状態にしてくれる言葉を見つけて、毎日、口に出す習慣を付ける。
それだけで、日々がより一層充実したものになるでしょう。
参考にしていただけると幸いです。
明日から、また違うテーマで書かせていただきます。