健晃堂

ゆるい就職

ゆるい就職:若者が正社員で働くのは「負け」 慶大助教が提案

9月24日の毎日新聞の特集にこのような記事を見つけました。

「ゆるい就職」は人材紹介会社「ビースタイル」の事業。

週休4日、つまり週3日働いて月収15万円の仕事を紹介するそうです。

派遣など非正規雇用で、15万円は額面、手取りでは12万~13万円。

「ゆるい就職」に関心を持つ若者たちが「週4日の休みをどう使うか」などを話し合うワークショップが18日行われたそうです。

説明会に足を運んだのは約150人。

そのうち3分の1が芝居や音楽などの趣味や芸能活動を続けたい人。

3分の1が起業やプロジェクトをはじめる準備時間がほしい人。

残り3分の1が今後やりたいことを模索したい人。

「ゆるい就職」のうたい文句は「週5日勤務のあたりまえがバカらしい」

このような記事を見て、とても複雑な気分になりました。

私は時間にも場所にも束縛されず、組織に依存しないライフスタイルを理想としています。

それらを実現するための方法を提案してはいますが、「週5日勤務のあたりまえがバカらしい」などという考えには疑問を感じずにはいられません。

私自身は、安定を求めて就職をしたことは今まで一度もありません。

二十代の頃は整骨院や整形外科に勤務しておりましたが、それも将来は独立開業することを前提とした上。

間違っても仕事が出来るタイプではありませんでしたが、組織に自分の人生を預けようとは想像もしなかったし、周囲にそのような気持ちで働いている人も居なかった気がします。

社会に出たら独立・起業するのが当たり前。

子供の頃からそれしか知らない私には、こういったワークショップに集まる若者の気持ちがわかっていないのかも知れません。

ただ最近の、「起業をしたい。週5日、会社に合わせて働く気はない」

といった風潮には、どうしても強い違和感を感じてしまいます。

週に“たった5日”の勤務で有給や保証もある待遇に対して、やってられないから起業したいなんて・・・

起業して自分が社長になり人に給料を払う立場になった時のことを想像してみて下さい。

今度は自分が従業員から、

「あなたの会社の仕事などやってられない」

と言われる立場になることを考えているんでしょうか?

正社員だろうとアルバイトだろうと雇われている側は、環境が嫌ならいつでも逃げることが出来ます。

起業したら逃げる訳にはいかなくなります。

多くの人の支えがあってこそ、自分のやりたい仕事が出来るようになるんです。

自分は一人で起業し、人は使わないから関係ないと思うのは大間違い。

私も今は一人会社の代表ですが、全ての業務を一人でこなすとなると趣味などに使う時間は全く無くなります。

スタッフの居てくれた整骨院の院長の頃の方が、よほど時間には余裕がありました。

好きなことが出来る時間的な自由が欲しいなら、会社員として働いている方が絶対に良い。

人の支え無くして、好きなことが出来る時間的な自由など絶対に得られることは無いでしょう。

「週5日、会社に合わせて働く気はない」

そんな動機で起業する人間を、支えてくれる人は本当に居るんでしょうか?

確かに、これからますます雇われる生き方はリスクが高い時代になるでしょう。

起業することを止める気はありませんし、私も身近な人には出来るだけ若いうちの起業をすすめています。

ただし、その為に「ゆるい就職」のような働き方は、独立して生きていく力を付けるには逆に遠回りになるのでは?と感じています。

いくら若くても、何らかの価値を社会に提供出来るのであれば、確かに正社員として働く必要など無いでしょう。

少しでも早く起業した方が、自分のためでもあり世の中のためにもなると思います。

しかし、働き方のワークショップに参加する若者にはそのような力はまだ無いのでは?

ならば自分を雇ってくれる会社のために全力で働くべきでは?

週5日勤務が当たり前なら、自分は週7日働いてやろう。

人の何倍も働き、仕事を通じて多くの経験を積み、会社にとってなくてはならない存在になる。

この気概を持ち多くの人から必要とされる人間になることが、起業して好きな生き方をするため一番の近道である、と私は思っています。

それまでどのような働き方をしてきたかは、起業してから全て自分自身に跳ね返って来ます。

若い頃にゆるい就職などではなく、見返りが得られなくても全力で働いてきた人間の下には、大きな力を貸してくれる人間が集まります。

出来るだけ楽に生き、人や組織を利用するだけで要領良く立ち回って来た人間は、起業すると今度は自分が人から利用されるようになるだけです。

私は二十代の頃は自分のことしか考えずに生きていました。

どうせ独立するんだからという気持ちで、どこで働いても周囲の同僚達への気遣いの気持ちも少なく、組織のための仕事からも逃げてばかりでした。

このような振る舞いは、独立してから全て自分自身に跳ね返って来ました。

一緒に働いていた頃には都合よく使われているだけに見えていたかつての同僚が、独立してからは、あっという間に全く別の世界に行ってしまう。

対して私は何をやろうにも協力者が得られず、何年経っても何も進歩出来ない状態が続く。

若い頃に手を抜いたことは、必ず将来自分自身への足かせとなります。

頑張った仕事からは何倍ものリターンが得られます。

私はこのような「ゆるい就職」や「週5日勤務のあたりまえがバカらしい」といった謳い文句には強く反対します。

このような風潮に惑わされることなく、若い頃は全力を出し切って働くことこそが、将来の本当の豊かな生き方につながるのではないでしょうか?

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